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・・・ 私は自分が小説を書く事に於いては、昔から今まで、からっきし、まったく、てんで自信が無くて生きて来たが、しかし、ひとの作品の鑑賞に於いては、それだけに於いては、ぐらつく事なく、はっきり自信を持ちつづけて来たつもりなのである。 私はそ・・・
太宰治
「『井伏鱒二選集』後記」
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・・・「何だい、なりばかり大きくて、からっきし意気地のないやつだなあ。仲間へ手紙を書いたらいいや。」月がわらって斯う云った。「お筆も紙もありませんよう。」象は細ういきれいな声で、しくしくしくしく泣き出した。「そら、これでしょう。」すぐ・・・
宮沢賢治
「オツベルと象」