・・・二百八種もの民族語の新聞が刊行されるようになって来た。 僅か三パーセント位しかなかった小学校入学率は、全ソヴェト同盟の文化水準向上につれてドンドン多くなって来た。五ヵ年計画で八歳からの全国学齢児童の国庫負担による就学は、勿論、各民族共和・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・が、ケレンスキーのブルジョア民主主義者らしい日和見戦術で、半封建的であると共に資本主義の土地関係を根本から建て直しが敢行され得るかのように想像したのが間違いであった。臨時政府はツァーの絶対制を立憲政治へこぎつけるまでがせいぜいで、失業と飢と・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・が続々刊行されはじめた。その一部として、アダム・ドミトリエフの『よし! 船をひけ』。別に、国内戦時代赤軍で働き有名な脚本「ラズローム」を書いたボリス・ラヴレーニェフの『斯うして防衛する』というバルチック艦隊の演習を記録した本が出版された。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・共青指導部の署名で出された、赤色メーデーを敢行せよ! というビラである。「そういうものが、こっちの方へ却って早く入るんだから妙でしょう」 狡い、ひひという笑いかたで太い首をすくませた。「マァ、この懸け声がどの位実現されるか見もの・・・ 宮本百合子 「刻々」
五月十九日の朝。日比谷映画劇場へ、国際観光局の映画の試写を見に行った。「富士山」、「日本の女性」。 そのとき挨拶をしたのは観光局の役人で、スマートなダブルの左右のポケットへ両手の先を入れた姿勢でラウドスピイカアの前へ立・・・ 宮本百合子 「国際観光局の映画試写会」
・・・ 日本プロレタリア文化連盟から刊行される日本で唯一つの階級的な婦人雑誌『働く婦人』の編輯には、他の文化団体からの参加とともに作家同盟に属す婦人作家たちが重大な役割を果しつつある。文学座談会、文学講習会、文学サークル等の活動で、婦人委員会・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・高原の頂に国際観光ホテル建造中です。 この川が流れて千曲川に合します。この手前にやや濃い山の左手に長野がある。更に左手のこのハガキからはずれたところに雪をいただいた日本アルプスが見えます。落日を受けて美しいのはこの遠くかすんだ山々です。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・河合栄治郎の公判記録が、『自由に死す』というパンフレットになって刊行された。彼のような穏当な学究さえも彼の理性が超国家主義と絶対主義に服従しないで立っているという理由で起訴され裁判された。河合栄治郎が学者としての良心の最低線を守ろうとした抵・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・つづいて、小林多喜二全集の編輯は、実に周密、良心的に努力されていて、ただうりものとして現在刊行されている各種の全集類とは、まるで趣をことにした実質をもっていることを、当然のことながら新しい意義でそれぞれの心と行動の上にうけとる思いがある。直・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・けて、受動的な頬杖をついたような気分で暮すが、日頃目をかけていた黒須千太郎をこめる集団脱走事件がおこり、折からの大雪で凍死するにきまっている千太郎を救おうという情熱によって振い立ち、情熱をもって一事を敢行しようとする人間の精神的高揚をよろこ・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
出典:青空文庫