・・・何故なら、日本女はこのレーニングラードが持つ最もよい劇団の一つ「若い観衆の劇場」に、今坐って、幸福な数百の子供にとりまかれている。 舞台では、「インドの子供」の第二幕が進行中だ。 インドには、宗派による沢山の階級がある。その階級の差・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・それに対する鼓舞の熱い燃え輝く力で観衆を一かたまりに高揚すべき大切な場面だった。それにもかかわらず彼等はそれをどう表現したか? 必要とは全然逆に表現した。――彼等は考えた。大詰だ。ここで、えーと、誰と誰、誰を踊らしてやらなければなるまい。だ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・秀作も駄作も大きさで先ず観衆を瞠目せしめる風であった。今年は、それがいずれも余り大きい作品がなくなって来ている。大家連が筆頭で小品風なものを、小品風な筆致で描いて、その範囲での貫録を示すかのように新進の画家たちとは別にまとめて一室に飾られて・・・ 宮本百合子 「帝展を観ての感想」
・・・囲がひろがって来ているし、そこへの需要も急速に高まっているけれども、一応独立した一個の働き手として見られている勤労婦人の毎日の生活の細部についてみれば、それぞれ職場での専門技術上の制約があり、男対女の慣習からのむずかしさがあり、更に家庭内の・・・ 宮本百合子 「徳永直の「はたらく人々」」
・・・この判決決定の日、裁判長は法廷の慣習を破って判決決定書の主文を先によんだ。このことは誰の眼にも妥当な法律の適用でないという感情をもたせた事実を語っている。前後二十余回に亙って宮本が病苦をおして「懇々」という形容詞をつけてよいほどスパイ摘発の・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ 良心の疚しさを、種々な自他の慣習的弁護で云い繕いながら、粗野な言葉を許されれば、幾十人の女がしたように、糧食と交換に「女性」を提供する、「気」にならずにはすむ訳です。 口実を許す「実際的必要」がなくなれば、口実によって人格を無視す・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・封建時代の日本人がその社会生活から慣習づけられていた感情抑制の必要、美の内攻性及び日本の建築、家具什器の材料に木、紙、竹、土類を主要品とした過去の日本の風土的特徴等が、「さび」を語った場合とりあげられなければならないであろう。 仏教の思・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・これまでの大人のそういう習慣を、果して観衆の全部が自分のこととして反省するところまで行っているだろうか。 切り抜き絵の插話が、一插話として軽く扱われたから、自然保育所での光景と家で母親が着物をひろげて見せる場面との間の脈絡に特別な注意が・・・ 宮本百合子 「「保姆」の印象」
・・・半ばさめ、半ば眠っている日本の現代への諷刺として、この点を興味ふかくとらえるならば、演出者は、ルネッサンスを歴史性ぬきの人間解放の面からだけ解説せず、その暗黒さにおいてもリアルに解説して、観衆の心に笑いながらいつか心にのこされてゆく疑問を植・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・アンネットは婚約の青年をもっていたのであるが、彼女は従来の仕来りどおりの結婚生活の中で二つの人間的な要素、個性的な特色が互に減殺しあうこと、愛情が見せかけの仕草や慣習の一つに堕すことなどを嫌って、通常の結婚生活に入ることを拒む。けれども、ア・・・ 宮本百合子 「未開の花」
出典:青空文庫