・・・従ってその瞬間における統一性は直覚的な速度に感受されなければならない。即ち表現の上に叙述的な冗長は斥けられ、単純化はその必然的な方法となる。文学的行動主義が、造型芸術における野獣派、ピュリズム、プリミチヴィズム、シムルタニズム、表現主義或い・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・然し、人間の主観的な感情の鏡によって、自然の姿が悲喜さまざまに観られ感受されると同時に、そのような各人の感情の発動する根源には、そのひとの住む自然が環境的な影響として力強く作用しているのである。 例えば、同じヨーロッパの中でもスペインや・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・コンスタンチン・シーモノフは旺盛な三十歳という年齢、彼の感性的な素質、経験の追求、観察の追求における作家らしい生活性などは、日本の浅く乏しい社会生活の流れの上に立った期間においてさえ、私たちに感受された。彼の横溢性はアメリカの横溢性と向いあ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・二 遠い遠い昔の幾百年かの間、我々の祖先の人々が思っていた通りに、あらゆる感情は、ただ胸によってのみ感受され、発動されるものだと仮定すれば、この時代の彼女の全生活は、その感情の宮殿の圏外には、一歩も踏み出さない範囲において進・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・一本の通路の、どっち側を歩くかということさえ歩く人間の気まかせにはさせられない歩行の間、特に独房にいるものは、自分の一歩、一歩を体じゅうで味い、歩くという珍しい大きい変化を神経の隅々にまで感受しようとする。本人たちが自覚しているよりも深いそ・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・る人々が、そういうこまかい利害からは埒外にあって、しかも今日の世の中では文学の仕事にたずさわる者に対して高飛車な朗らかさと率直さを示し得る背景の前にいる人々を眺めたら、一応それらの面が強い刺激となって感受されるのだろう。それを、単純にいいと・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・あるままを素直に感受する敏感さと、驚きもよろこびも疑問をも活々と感じ得る慧智と、人間の文化の今日までの成果に立っての強靭なる判断力、推理力が、益々作家に必要な稟質となって来ている。このような点では、科学の発展のヒントをつかむ人間精神の活動の・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・ すべてがどんな下ら事(までが渦巻いて心の前をあばれまわって悪い瓦斯の立ち舞う現在に芸術に入って居るものは心の眼を見ひらいて芸術の真の価値を知って真の高潔さを感受しなければなるまいと思う。 今の世の中はあんまり芸術が安っぽくだれにで・・・ 宮本百合子 「無題(二)」
・・・ゴーリキイは天成の素直さ、鋭い清廉な感受性によって、ここに生活を少しでもいい方に向けようと努力している一団の人々を発見したのであった。 然し、学生の討論や、退屈な経済学の本の講義はゴーリキイにどうしても馴染めない。まして、ゴーリキイを目・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・小林氏の感受した美が氏の描いた情趣と同一物であるならば、自分の言うごとき区別は立てられないかもしれない。が、事実問題として、ああいう美しさが六月の太陽に照らされたほの暑い農村の美しさのすべてであるとは言えないであろう。小林氏にしてもあれ以外・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫