・・・主題を、きびしいプロレタリア的観点からそしゃくしぬいたという手ごわさがない。むしろ、文章に気をつかっているのが分る。すらすらと読める文章を書こうとして、土台をがっちり打ちこむことをおるすにし、その文章の上でさえ、大衆のかたまった力、熱、メリ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 今日の電力不足は旱天が大半の理由でありましてと、勝逓相の答弁が始められると、議場にどっと笑いがおこり、傍聴席も何となし口元をほころばした。 藤原銀次郎という名に対して、あの演壇に立っての柔らかな声、物腰とは、会社の会議じゃないのだ・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・ さてそのような観点から麦積山の写真をながめていて、まず痛切に感ずるところは、ここにある魏の時代の仏像がいかにも推古仏の源流らしい印象を与えること、そうしてそれが塑像であることと何らか密接な関連を持っているらしく見えることである。・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫