・・・昭和十九年からは学徒動員が行われ、この年には四百五十万人という勤労動員がされたのであった。昭和十四年に比べれば四倍以上の増加率であった。その中で学徒の動員は百九十二万七千三百七十五、女子挺身隊は四十七万二千五百七十三という数に達した。十五歳・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・丁度、美術愛好者が、古代ギリシャ建築の明美な柱列を見た時、心を打れ、何はともあれ、アカンサスの葉で飾られた精緻な柱頭と、単純で力強い柱台とに注意を向けた如く、学徒が、狂暴な程、雑多な原質の目覚める青年期、不思議に還元的色彩を帯びる更年期を特・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・それのみか、戦いの終わろうとする間ぎわになって、やはり空襲のために、学徒で召集されていた愛孫を失われた。そのあとには占領下の変転のはなはだしい時期がつづく。その一年あまりの間、都会育ちの先生が、立ち居も不自由なほどの神経痛になやみながら、生・・・ 和辻哲郎 「歌集『涌井』を読む」
出典:青空文庫