・・・ 異常に発達したたまの食欲はいくぶんか減ってそれほどにがつがつしなくなって来た。気持ちの悪いほどふくれていた腹がそんなに目立たなくなって来るとやせた腰からあと足が妙に見すぼらしく見えるようになりはしたが、それでもどうやら当たりまえの猫ら・・・ 寺田寅彦 「ねずみと猫」
・・・人間が人類という生物ではあっても、地面に投げ与えられたものを何でもがつがつ食べる生物ではなくて、人間ばかりが社会生活の発展から生物的な要求としての餌に対する悲しみも、憤りも、誤りも、自覚しているのである。資本主義社会は一日一日と個人の中に人・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ そして、まるでがつがつした犬のように喘いだり、目を光らせたりして鼻嵐しを吹きながら、そこいらに散らかっている古藁で、人形を作りにかかった。 彼等の仲間では昔ながら恐ろしいものにされている祈り釘をこの人形に打ちこんで海老屋の人鬼の手・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・一九二八年のゴーリキイのソヴェト訪問の結果は、世界のすべての資本主義国が卑しい期待にがつがつして待ちかねていたところであった。イタリーのソレントに住んでいながら、常にソヴェト同盟の達成に留意し、反ソヴェト運動に対して文筆をもって闘って来たゴ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
出典:青空文庫