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・・・ 来て見ろよ、もうきちきちだよ、 そこで出来るだろう。 向うの窓をあけて私の部屋の廂を見る。「駄目なんだよ、 此処に石が有るから。 彼方へ廻ったら濡鼠だ。「どうにかしてやるから待ってろ。 首を引込・・・
宮本百合子
「通り雨」
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・・・狭い土面をきちきちに建ててある牛舎には一杯牛が居る。私の幼さい時から深い馴染のある、あの何だか暖ったかい刺激性の香りが外まであふれて居る。 退屈な乳牛共が板敷をコトコト踏みならす音や、ブブブブと鼻を鳴らすの、乾草を刃物で切る様な響をたて・・・
宮本百合子
「農村」