・・・侵略戦争を強行し、すべての人民を戦争目的に動員するために、日ごろの差別感情をとりのぞく必要が感じられたからであった。つまり、人権剥奪の最もはげしい形である戦争への召集のために、個々の存在抹殺としての身分平等化が行われたわけであった。朝鮮の人・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・一九二七・八年からあとの日本の社会は、戦争強行と人権剥奪へ向って人民生活が坂おとしにあった時期であり、そこに生じた激しい摩擦、抵抗、敗北と勝利の錯綜こそ、「伸子」続篇の主題であった。そういう主題の本質そのものが、当時の社会状態では表現不可能・・・ 宮本百合子 「あとがき(『二つの庭』)」
・・・太平洋戦争に突入する準備を強行していた日本絶対主義の軍事力は、極度に言論圧迫を行って、科学でも、文学でも、子供の歌まで侵略万能に統一した。情報局の陸海軍人が出版物統制にあたって、自分たちの書いたものを出版させて印税をむさぼりながらすべての平・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・ したがって、ジャーナリズムにあらわれる程度の転向についてのすべての論議は、第一の問題である日本の天皇制ファッシズムと、戦争強行に裏づけられている治安維持法の批判、それへの反抗はあらわさなかった。その重要な社会的・階級的モメントをとばし・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ この評論集に書かれた内容、書かれざる内容をもたらしている八年の歳月は、プロレタリア文学運動が挫かれてのちの日本現代文学が、戦争の拡大と強行の政策に押しまくられて、爪先さがりにとめどもなく、ファシズムへの屈従に追いこまれて行った時代であ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・も一九二九年の夏のロンドンで、十月にアメリカに経済恐慌がおこる直前のロンドンであった。そのころ、イギリスの失業者数は三百万人から四百万人もあった。高度に発達した資本主義国は、そのころ急速に資本の独占化にすすんで、いわゆる合理化の結果、どこで・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・ アメリカへの戦争準備を強行中の軍事力は専断のかぎりをつくした。情報局でこしらえたジャーナリストと役人との、執筆者リストのようなものを、そのころ偶然みたことがあった。それは、当時の輿論が、どんなにふみにじられたものであったかを証明した。・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・とこぼし、更に「おまけに、お前が気が弱くなったのは、体が弱ってきたセイってよりも、むしろ恐慌のセイらしいぞ」と弱気な、非闘争的なダラ幹魔術にかかっているような述懐をもらしたかと思うと、忽然として次の行では作者はそのチャーリーに「収入が減った・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・女なら女のことを解決するかもしれない、というぼんやりした婦人たちの期待は、時期尚早のうちに強行された選挙準備のうちに、決して、慎重に政党の真意を計るところまで高められようもなかった。連記制は、この未熟さに拍車をかけて、三名選挙するのなら、そ・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・耕地面積は五年前を一〇〇とすると一四五で、世界のよその国ではアメリカでも農業恐慌で耕作面がどんどん縮少しているのに比べて実に大した違いである。 農民の収入も自然と年々高まって来ている。 集団農場にも種類があって、単に蒔つけ、刈入れ、・・・ 宮本百合子 「今にわれらも」
出典:青空文庫