・・・海市でこしらえたチェックの布地 この胴のところ、バンドの幅ほどくくれて居たの何ともたまらず「仕様がないじゃありませんか じゃ、この幅をひだによせて右左に一本ずつたたみましょう、そうすると、真中に合わせめの線があってなるか・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・で、マヤコフスキーは大胆に、ソヴェトの建設事業に非同情的な外国人と、いい布地の外套を着た外国人とさえ見ればペコつく対外文化連絡協会案内人の卑屈さを、漫画化してやっつけている。 マヤコフスキーが、ソヴェトを愛し、その発達を熱望し、それを自・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 二三度続けて散歩するうちに、何となく感じたのだが、神楽坂というところは、何故ああ店舗も往来も賑かで明るいくせに、何処か薄暗いような、充分燦きがさし徹し切れないようなほこりっぽいところがあるのだろう。布地にでも例えると、茶色っぽい綿モスリン・・・ 宮本百合子 「茶色っぽい町」
・・・ 羽織の袖口が余りバラバラおそろしくなるので、今着ているのは、外側から同じような布地でくるみぶちをとってしまった。細かい絣だから余りみっともなくない。 そういう羽織を着て、体の半分をくるむような大前掛をかけて、帯は御免蒙って兵児帯で・・・ 宮本百合子 「働くために」
・・・――それからオーヴァが欲しいっていうけれどとても駄目だから、一つ布地で買おうっていっているんです――ね、自分で縫うね」「もち! 縫うわ、×子うまいもんよ」「ハハハ、手袋はもう買ったからいいね」「ええ結構!」「――私は貧乏にな・・・ 宮本百合子 「百銭」
・・・最後に来る一つは濡れて光る鼠色の布地を帆に張りあげているようだ。 他に船はない。 その三艘だけが、雲のために黝み始めた海上を、暗紅色の帆、オリーヴ色の帆、濡れた鼠の帆と連なって、進行して行く。 それ等が始め色が変ったと同じ順序で・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・マリアは全部白ではあるが、布地とつやの様々の変化を美しくあしらった部屋着を着ている。「バスチャン・ルパアジュの目はそれを見てうれしそうに見張った。――おお、私に描くことができたら! 彼はいう。そうして私も! もうだめ、今年の画は!」 十・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・例えば外套、防寒靴、布地等をそういう組織で配給している。 今ソヴェトは重工業に力を入れているから軽工業の生産品はまわり切れない。その代り忠実に生産に従事して働いているものは食糧及び軽工業の生産品にも左程ひどく欠乏を感じずに暮している。・・・ 宮本百合子 「露西亜の実生活」
出典:青空文庫