・・・もっともわざと焦点をはずした場合のように全部が均等に調和的にぼやけたのならば別であるが、明確なものと曖昧なものとが雑然と不調和に同居しているところに破綻があり不快がある。このような失敗はほとんど日本の時代物の映画に限って現われる特異現象であ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・そうしてそのおのおのが七曜日のいずれに起こる確率も均等であると仮定すれば、三度続けて金曜日に起こるという確率は七分の一の三乗すなわち三百四十三分の一である。しかしこれはまた、木曜が三度来る確率とも同じであり、また任意の他の組み合わせたとえば・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・換言すれば週期的運動の位相がほぼ等分にちがっているほうが乗客の待ち合わせる時間を均等にし従って乗客の数を均等に分布する点で便利であろうと思われる。しかし実際には三つがほぼ同時に同じ階を同じ方向に通過する場合が多いように思われる。もっともそう・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・ それでもしこのような片寄りがちの運転状況を避けて、もう少し均等な分配を得たいというならば、そのために採るべき方法は理論上からは簡単である。第一には電車の車掌なり監督なりが、定員の励行を強行する事も必要であるが、それよりも、乗客自身が、・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・テヘラン、イスパハンといったようないわゆる近東の天地がその時分から自分の好奇心をそそった、その惰性が今日まで消えないで残っているのは恐ろしいものである。「団々珍聞」という「ポンチ」のまねをしたもののあったのもそのころである。月給鳥という鳥の・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・うにかしようという非望を企てるわけにも行かないわけであるが、それでもただやみがたい好奇心から、余暇あるごとに少しずつ、だんだんに手近い隣接国民の語彙を瞥見する事になり、それが次第次第に西漸していわゆる近東から東欧方面までも、きわめて皮相的な・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・ これらの現象を通じて言われることは、普通の古典的な理論的考察からすれば、およそ一様に均等に連続的にあるいは対称的に起こるであろうと考えらるるものが、実際には不均等に非対称的に不連続的にしかも統計的に起こるのである。このような場合を適当・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・ 吾人の理性に訴えて描き出す幾何的の空間、至るところ均等で等向的な性質を備えた空間は吾人の視感に直接訴える空間とは恐ろしくかけ離れたものである。視感的空間では仰向きの茶わんとうつ向きの茶わん、一里を隔てた山と脚下の山とはあまりに相違した・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・ 方則が可能であるためには宇宙の均等という事が必要である。時と空間に対して不変な事実が認め得られる事が必要である。かくのごとき事実が吾人に認め得られるというのは不思議な事ではあるまいか。 華厳経に万物相関の理というのが説いてあるそう・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・一九四一年十一月より五ヵ月ばかり、連合軍側の戦時特派員という資格で、アフリカ、近東、ソヴェト同盟、インド、中国を訪問し、ファシズム、ナチズムに対して民主主義をまもろうとする国々のたたかいの姿を報道した。「ポーランドに生れ、フランスに眠るわが・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
出典:青空文庫