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・・・権力者らの、眼にあまる大きい堕落は、大きすぎて私たちに一目で見きわめかねるからとて、抵抗力ない女の罪を喧々囂々することで、自分を義人と感じるには、私たち女の経て来た苦労は厳粛すぎるのである。〔一九四六年三月〕・・・
宮本百合子
「人間の道義」
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・・・ けれども、それが、全く生命を以て生きるのは、義人の魂の裡丈だと云うことを、私共は忘れてはなりません。 十人の人は、皆、正しく生きたい本願を裡に潜めています。が、それと同時に、あらゆる地上的な幸福に手を延すことを制し得ません。 ・・・
宮本百合子
「ひしがれた女性と語る」