-
・・・ どうせ文楽の広告ビラだろうくらいに思い、懐手を出すのも面倒くさく、そのまま行き過ぎようとして、ひょいと顔を見ると、平べったい貧相な輪郭へもって来て、頬骨だけがいやに高く張り、ぎょろぎょろ目玉をひからせているところはざらに見受けられる顔・・・
織田作之助
「勧善懲悪」
-
・・・と口早に挨拶したきり何も言わない、そしてお源が炭俵の並べてないのに気が着き顔色を変えて眼をぎょろぎょろさしているのを見て、にやり笑った。お源は又た早くもこれを看取りお徳の顔を睨みつけた。お徳はこう睨みつけられたとなると最早喧嘩だ、何か甚い皮・・・
国木田独歩
「竹の木戸」