・・・それでくどいようでも同じ事を繰り返す事を許してもらいたい。 新聞を最も必要と感ずる人の種類を考えてみると、それは、広義における投機者であり、また一種特別な意味でのブールジョアである。いい意味での善良な国民、穏和な意味でのプロレタリアは、・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・出発の前晩まで、母親はいろいろにくどいた。父親はだまっていたが、勿論賛成ではなかった。しかし三吉は、高島を福岡へおっかけよう、そこで紹介状をもらって、ボルの東京へゆこう、それだけを心のなかにきめていた――。「高坂さんや深水さんにも、だま・・・ 徳永直 「白い道」
・・・ 歳月を経るにつれ、社会事情が変遷するにつれ、その文壇というものが、文学的分野で全く特殊な場所となって来た有様についてくどい説明は今日必要ないが、作家が大衆の日常生活とはなれ所謂文壇内の存在化して来る程度とその速度とは、畢竟するに、日本・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・さあ御面倒でも雇いにいらっしゃって下さいまし。くどいようで失礼ではございますが、女を内へ送ってやる時には、いつでも一番余計に馬の附いている馬車を連れて来るものだと云うことをお忘れにならないようにね。さあ、いらっしゃいましよ。(男首を・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「辻馬車」
出典:青空文庫