・・・といいながら懐から折木に包んだ大福を取出して、その一つをぐちゃぐちゃに押しつぶして息気のつまるほど妻の口にあてがっていた。 から風の幾日も吹きぬいた挙句に雲が青空をかき乱しはじめた。霙と日の光とが追いつ追われつ・・・ 有島武郎 「カインの末裔」
・・・そのゴサン竹の傍に菖も咲けば著莪も咲く、その辺はなんだかしめっぽい処で薄暗いような感じがしている処であったが、そのしめっぽい処に菖や著莪がぐちゃぐちゃと咲いているということが、今に頭の中に深く刻み込まれておるのはどういうわけかわからん。とに・・・ 正岡子規 「初夢」
・・・ 画かきはにわかにまじめになって、赤だの白だのぐちゃぐちゃついた汚ない絵の具箱をかついで、さっさと林の中にはいりました。そこで清作も、鍬をもたないで手がひまなので、ぶらぶら振ってついて行きました。 林のなかは浅黄いろで、肉桂のような・・・ 宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
・・・見ると一人の変に鼻のとがった、洋服を着てわらじをはいた人が、手にはステッキみたいなものをもって、みんなの魚をぐちゃぐちゃかきまわしているのでした。 その男はこっちへびちゃびちゃ岸をあるいて来ました。「あ、あいづ専売局だぞ。専売局だぞ・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・見ると、一人の変に鼻の尖った、洋服を着てわらじをはいた人が、鉄砲でもない槍でもない、おかしな光る長いものを、せなかにしょって、手にはステッキみたいな鉄槌をもって、ぼくらの魚を、ぐちゃぐちゃ掻きまわしているのだ。みんな怒って、何か云おうとして・・・ 宮沢賢治 「さいかち淵」
・・・一人は丁度、五百歩ばかり離れたぐちゃぐちゃの谷地の中に住んでいる土神で一人はいつも野原の南の方からやって来る茶いろの狐だったのです。 樺の木はどちらかと云えば狐の方がすきでした。なぜなら土神の方は神という名こそついてはいましたがごく乱暴・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・山男はどうもその支那人のぐちゃぐちゃした赤い眼が、とかげのようでへんに怖くてしかたありませんでした。 そのうちに支那人は、手ばやく荷物へかけた黄いろの真田紐をといてふろしきをひらき、行李の蓋をとって反物のいちばん上にたくさんならんだ紙箱・・・ 宮沢賢治 「山男の四月」
・・・ ○坊や たべるの たべゆの ○カキクケコ云えず かあちゃんをターチャん ○いもの煮えたの御存じない いものとぐちゃぐちゃいい、ジョジョンジナイ ジョジョンジナイと云う。 ○おへそを デンデン ○ありがとう あなとうとー・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
出典:青空文庫