上 この武蔵野は時代物語ゆえ、まだ例はないが、その中の人物の言葉をば一種の体で書いた。この風の言葉は慶長ごろの俗語に足利ごろの俗語とを交ぜたものゆえ大概その時代には相応しているだろう。 ああ・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・ 外聞によって動くような臆病な大将の下では、軽佻な、腹のすわらぬ人物が跋扈する。彼らは口先で人を言い負かそうとするような、性格の弱い、道義的背骨のない人物であって、おのれより優れたものを猜み、劣ったものを卑しめる。このそねみと卑しめとは・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・書いた時期は慶長の末ごろ、十七世紀の初めと推定せられている。 この書を通読すれば、おそらく誰の目にも性質の異なる部分が識別せられるであろうと思う。は高坂弾正の立場で物を言っている部分である。は信玄一代記と山本勘助伝とのからみ合わせで、勘・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫