・・・死にかかったような男の心の中には一日かせぎためた金をふところに入れて町をぶらついて、面積のだだっぴろいかおにけじめなく御しろいをぬりつけてすましたようなかまえをして盛にその日かせぎの、はげしい欲望にかられて居る男を長きせるのがんくびでおびき・・・ 宮本百合子 「ピッチの様に」
・・・の中で、竹造と作者とのけじめは、そのようにくっきりとしていない。作者は、竹造のこまごまとした内的推移についてゆくうちに、あるところでは全く竹造と同化して余韻嫋々的リズムへ顔を押しつけているために、作品の後味は、この作品がある特別な階級人をそ・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・自然発生にあらわれはじめた無産者文学一般の中に、プロレタリア文学とルンペン・プロレタリアート文学とのけじめをつけ、プロレタリア文学と農民文学、同伴者文学との現実的な関係をあきらかにしたのも、プロレタリア文学理論であった。文学内部の課題として・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・恋愛のように人間の総和的な力の発動を刺戟する場合、今日の私たちは自分たちの全人間が、その精神と肉体とが互に互のけじめもつけかねる渾然一体で活躍し、互が互の語りてとなって、愛する者に結合することを知っているのである。 ところで、日本の自然・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫