・・・父が外国から買って来た絵画の本に描かれているそれと同じハアプが裾の広い黒衣の、髪に只一輪真赤な薔薇をさした女と現れたのだから、私は感歎した。女は随分気高く、美しく、音楽も上手に思えた。ハアプが、ヴァイオリンのようではなく、ピアノのような音な・・・ 宮本百合子 「茶色っぽい町」
・・・ 国威ということが、昨今新しい内容でとりあげられている。それを発揚した時代への思慕は、女の服飾の流行に桃山時代好みとして再現されている。国威というものの普通解釈されている内容によって、それを或る尊厳、確信ある出処進退という風に理解す・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・そして、そういう日本資本のひろがりを国威発揚と表現する方が便宜だった。その方が人民の伝統的な国びいきの感情を刺戟し、満足させ、世界のどの文明国よりもやすい労働賃銀で一台の自転車にしろ生産して、より多い利潤率を保つことが出来やすかったから。資・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ということは、かつてベルリン・オリンピックのとき、軍国主義日本が示した国威発揚的示威に正しい批判をもつこんにちの日本青年は、世界平和のためにこそ、平和日本のためにこそ、世界の民主的青年とともに競技するものであるという態度を明確にする以外にな・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
出典:青空文庫