・・・始は甚太夫が兵衛の小手を打った。二度目は兵衛が甚太夫の面を打った。が、三度目にはまた甚太夫が、したたか兵衛の小手を打った。綱利は甚太夫を賞するために、五十石の加増を命じた。兵衛は蚯蚓腫になった腕を撫でながら、悄々綱利の前を退いた。 それ・・・ 芥川竜之介 「或敵打の話」
・・・始は甚太夫が兵衛の小手を打った。二度目は兵衛が甚太夫の面を打った。が、三度目にはまた甚太夫が、したたか兵衛の小手を打った。綱利は甚太夫を賞するために、五十石の加増を命じた。兵衛は蚯蚓腫になった腕を撫でながら、悄々綱利の前を退いた。 それ・・・ 芥川竜之介 「或敵打の話」
・・・何かあらずにはいられない、僕らは皆小手しらべはすんだという気がしている。 芥川竜之介 「校正後に」
・・・何かあらずにはいられない、僕らは皆小手しらべはすんだという気がしている。 芥川竜之介 「校正後に」
・・・多門は小手を一本に面を二本とりました。数馬は一本もとらずにしまいました。つまり三本勝負の上には見苦しい負けかたを致したのでございまする。それゆえあるいは行司のわたくしに意趣を含んだかもわかりませぬ。」「すると数馬はそちの行司に依怙がある・・・ 芥川竜之介 「三右衛門の罪」
・・・多門は小手を一本に面を二本とりました。数馬は一本もとらずにしまいました。つまり三本勝負の上には見苦しい負けかたを致したのでございまする。それゆえあるいは行司のわたくしに意趣を含んだかもわかりませぬ。」「すると数馬はそちの行司に依怙がある・・・ 芥川竜之介 「三右衛門の罪」
・・・二の腕に颯と飜えって、雪なす小手を翳しながら、黒煙の下になり行く汽車を遥に見送った。 百合若の矢のあとも、そのかがみよ、と見返る窓に、私は急に胸迫ってなぜか思わず落涙した。 つかつかと進んで、驚いた技手の手を取って握手したのである。・・・ 泉鏡花 「革鞄の怪」
・・・二の腕に颯と飜えって、雪なす小手を翳しながら、黒煙の下になり行く汽車を遥に見送った。 百合若の矢のあとも、そのかがみよ、と見返る窓に、私は急に胸迫ってなぜか思わず落涙した。 つかつかと進んで、驚いた技手の手を取って握手したのである。・・・ 泉鏡花 「革鞄の怪」
・・・ これは小手贔屓の言うところだ。「えいも悪いもない、やっぱり縁のないのだよ。省作だって、身上はよし、おつねさんは憎くなかったのだから、いたくないこともなかったろうし、向うでも懇望したくらいだからもとより置きたいにきまってる、それが置・・・ 伊藤左千夫 「春の潮」
・・・ これは小手贔屓の言うところだ。「えいも悪いもない、やっぱり縁のないのだよ。省作だって、身上はよし、おつねさんは憎くなかったのだから、いたくないこともなかったろうし、向うでも懇望したくらいだからもとより置きたいにきまってる、それが置・・・ 伊藤左千夫 「春の潮」
出典:青空文庫