・・・たぶん、私は、そんなうわさがあるところでないかと思って、ここへ立ち寄ってみたのです。古墳のある丘や、畑には、金の蔵が浮かぶとか、金の鶏が浮かぶとかいううわさが、きまってあるものです。このあたりの地形を見たときから私は、古墳のあったところか、・・・ 小川未明 「銀河の下の町」
・・・ 藪の小路を出ると墓地がある。古墳累々と崖の小高いところに並んで、月の光を受けて白く見える。豊吉は墓の間を縫いながら行くと、一段高いところにまた数十の墓が並んでいる、その中のごく小さな墓――小松の根にある――の前に豊吉は立ち止まった。・・・ 国木田独歩 「河霧」
・・・それをわれわれは、わが国の古墳時代の造形美術として取り扱うことができるのである。 わが国の古墳時代というと、西暦紀元の三世紀ごろから七世紀ごろまでで、応神、仁徳朝の朝鮮関係を中心とした時代である。あれほど大きい組織的な軍事行動をやってい・・・ 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
出典:青空文庫