・・・いかに多数でも、かぎりがあるから、根絶やせないはずはない。やはり、薬がきかないのだと思って、いろ/\新しい薬を求めて来ました。どれにしても、ウエノトロン、もしくは、ニコチン製のものだったろうが、園芸の領野が広いだけに、沢山会社もあるものだと・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・ぼくは幼年時、身体が弱くてジフテリヤや赤痢で二三度昏絶致しました。八つのとき『毛谷村六助』を買って貰ったのが、文学青年になりそめです。親爺はその頃妾を持っていたようです。いまぼくの愛しているお袋は男に脅迫されて箱根に駈落しました。お袋は新子・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・その現実の力のつよさで、戦争というものの根絶された日本の民主生活の完成を見たいと思うのである。 すべての人民が、今や自分の分別によって「人」たらんとしているのであるけれども、特に、青少年、婦人にとって、この選挙は、深い深い意義をもってい・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・戦争によってひきおこされたすべての国の不幸な経験は、戦争そのものの根絶という方向へ生き越され、くみとられてゆかなければならないと思う。そして世界はそのように動いている。日本だけが、何とでもしてこれから戦争へまきこまれることさえなければそれで・・・ 宮本百合子 「『この果てに君ある如く』の選後に」
・・・ 然しながら、社会の機構が生み出している複雑な利害の分裂、悪徳、悲惨、戦争の惨禍などを、農民の素朴な信仰心で根絶しうるものでもないし、又そのような現実生活を、あるとおりの社会の中で実現し得るものでもない。トルストイが、彼の全精力の卓抜さ・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・不良な男女は根絶され難い。親は何をよりどころとして子供らを信じ、若い娘は自身にどんなよりどころを見出したらよいのか。虫が好かない、というしゃれた表現を日本人は持っている。人間を直感するこの虫の好みが高められ明瞭になりさえすれば、誘惑というき・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・順調な家庭生活の社会的基盤さえも失われている社会で、どうして不幸が根絶されるだろう。 民主的進展の速いヨーロッパ諸国で、この大戦後、婦人の政治的・社会的発言が強くなった必然は、ここにこそある。未亡人という文字は単調だが、それを実質づける・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ブルジョア文壇に悪行があるとすればそれはとりも直さずその作家たちの属する社会層の悪行であり、その根絶への方向は、一作家の文壇の枠内でのジタバタ騒ぎにすぎないことはわれわれの目に明らかなのである。 さて再び、自然主義以来の老大家の作品とそ・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ことの出来た各国の人々は、自分たちの国の支配権力は戦争しつつあり、そのために互が動員されながらも、一方ではっきりと戦争が人類の不幸であり、野蛮の証拠であり、それは一刻も早く、そして徹底的に人類生活から根絶されなければならないことを主張した。・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・失業は根絶され、労働者の平均賃銀は二倍強に上っている。ひきつづいて一九三七年までに行われる第二次五ヵ年計画で、ソヴェト同盟の労働者農民は更に社会主義の社会を完全なものとし、この世界に階級のない社会を建設しようとしている。ゴルロフカ炭坑区「労・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
出典:青空文庫