-
・・・ 女の子はまごついてしまった。「そうだ。――ハバ、ハバ!」 豹吉はいらいらして言った。ハバとは「早くしろ」という意味の進駐軍の用語である。 珈琲、ケーキ、イチゴミルク、エビフライ、オムレツ……。 運ばれて来るたびに、靴磨・・・
織田作之助
「夜光虫」
-
・・・パンセは、ごついし、春夫の詩集は、ちかすぎるし、何かありそうなものだがね。」「――あるよ。僕のたった一冊の創作集。」「ひどく荒涼として来たね。」「はしがきから読みはじめる。うろうろうろうろ読みふける。ただ、ひたすらに、われに救い・・・
太宰治
「雌に就いて」