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・・・紅葉美妙以下硯友社諸氏の文品才藻には深く推服していたが、元来私の志していたのは経済であって、文学の如きは閑余の遊戯としか思っていなかった。平たくいうと、当時は硯友社中は勿論、文学革新を呼号した『小説神髄』の著者といえども今日のように芸術を深・・・
内田魯庵
「二葉亭余談」
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・・・昔者道士があって、咒を称え鬼を役して灑掃せしめたそうだ。その弟子が窃み聴いてその咒を記えて、道士の留守を伺うて鬼を喚んだ。鬼は現われて水を灑き始めた。而るに弟子は召ぶを知って逐うを知らぬので、満屋皆水なるに至って周章措く所を知らなかったとい・・・
森鴎外
「鴎外漁史とは誰ぞ」