・・・常任中央委員会から左翼的逸脱の危険を、警告されたのであった。このときは、山田清三郎が、右翼的日和見主義の自己批判を発表した。当時「ナップ」の書記長は山田清三郎であった。「前進のために」をよむと、誤りをみとめつつ、なお林房雄などの卑劣さに対す・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・その情勢が、ドイツ・フランス等の大衆を団結させ、左翼の組織は拡大した。孫文派が広東政府を樹立し、中国国民党宣言を発表した。京漢鉄道総工会の成立大会を武力解散させた軍閥呉佩孚に対して中国労働者がジェネストを起し、英国の労働運動に一つのエポック・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ 例えば、左翼劇場で上演した「銅像」を、みんなどんなによろこんで観、あとまでその印象をもっているか。 ところが、諷刺は元来非常に活々した社会性をもっているものだけに、諷刺の対象が時代の影響をうけて変遷するばかりではない。諷刺するもの・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・れた後、ファシズムに抗する人民戦線の問題、文学における能動精神がフランスから紹介されたが、近代の市民生活の歴史をもたず、封建保守の傾きのつよい当時の日本の作家の雰囲気の中には、いつも、こうむる弾圧は、左翼だからという考えかたに支配された。自・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・一方には、現在の状勢でプロレタリア文学運動の確立のために組織活動なしでどうするものぞ、組織活動によってこそ、多数者獲得の課題に答え得るのだ、今書けないのは仕方がない、という左翼的日和見主義があり、他には、時間の問題とする部分もある。創作をす・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・「左翼文学が今日沈潜期にあることを思って喧嘩すぎての棒ちぎりといった疚しさを抱かせられたが」云々と、石坂氏は対象を或る種の左翼的作家、或は思想運動者の上にだけ置いて物を云っているように見える。けれども日本の左翼運動の歴史的な退潮の原因は・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・昭和初頭から、それがわずか十年たらずの短い間に八つ裂にされてしまったまでの日本の左翼運動とその思想が、今日かえりみて、多くの人々に未熟であり、機械的であり、模倣であり、主観的であったと批判される根本の原因は、一方に日本が、どんなに封建的な専・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・しかし、左翼作家のすべてがそのような大主題を、解放史の全局面から把握し、而も素晴らしい新手法で芸術品に仕上げる程の才能をもって生れているとは云えない。ファジェーエフの「壊滅」、ショーロホフの「静かなドン」などはよい作品だが、国内戦は局部的に・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ そんな話を聞いていると、私は左翼の者を引っぱるために、警察が飲食店の女中たちを一人つかまえさせればいくらときめて買収しているということを思い出した。交番の巡査が、何でも引っぱって来て一晩留置場へぶちこみさえすれば五十銭。共産党関係だっ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・経済上にあらわれたこういう事情は、文化の方面にも深い影響をあらわし、今日の真面目な勤労生活者はひところのように左翼的な専門の教養をもっていなくても、現実の生活教育によって、それぞれ生活からの欲求として、日常生活の上のより明るい合理的なもの、・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
出典:青空文庫