・・・お場所柄を顧みざるお咎めは甘んじて受ける。乱心などはいたさぬというのである。 権兵衛の答を光尚は聞いて、不快に思った。第一に権兵衛が自分に面当てがましい所行をしたのが不快である。つぎに自分が外記の策を納れて、しなくてもよいことをしたのが・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・「もしも一個の人間が、現下に於て、最も深き認識に達すれば、コンミニストたらざるを得なくなる。」と。 しかしながら、文学に対して、最も深き認識に達したものは、コンミニストたらざるを得なくなるであろうか。 もしも、文学に対して、最も・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
・・・の地帯やその背後の緩衝地帯を突き抜けて、「いまだ触れられざる地」に達したとき、そこに彼らは至る処、十六世紀のカピタンたちが沿岸で見たと同じ華麗なものを見いだしたのである。 フロベニウスは一九〇六年、その第一回の探検旅行の際には、なお、コ・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫