・・・ひに舅姑の晩節を存するあり 欣然寡を守つて生涯を送る 犬田小文吾夜深うして劫を行ふ彼何の情ぞ 黒闇々中刀に声あり 圏套姦婦の計を逃れ難し 拘囚未だ侠夫の名を損ぜず 対牛楼上無状を嗟す 司馬浜前に不平を洩らす 豈翔だ路傍狗鼠を・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・二葉亭が遊戯分子というは西鶴や其蹟、三馬や京伝の文学ばかりを指すのではない、支那の屈原や司馬長卿、降って六朝は本より唐宋以下の内容の空虚な、貧弱な、美くしい文字ばかりを聯べた文学に慊らなかった。それ故に外国文学に対してもまた、十分渠らの文学・・・ 内田魯庵 「二葉亭四迷」
・・・ 六 司馬江漢の随筆というのを古本屋の店頭で見つけたので、買って来て読んでみた。こういう書物は縁のない方であるが、何か理化学方面に関する掘出物でもあるかと思ったからである。 春信の贋物をかいたという事で評・・・ 寺田寅彦 「断片(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・(司馬江漢、『春波楼筆記 科学界にも京人と奥州人がある。ロマンチシズムとクラシシズムの両極の間に世界が回転する。 五「物理学はエキザクトサイエンスである。」この言葉ほどひどく誤解されてそしてそのおかげでエキザクトな物・・・ 寺田寅彦 「人の言葉――自分の言葉」
・・・朝倉氏はもと斯波氏の部将にすぎなかったが、応仁の乱の際に自立して越前の守護になった。そうして後に織田信長にとっての最大の脅威となるだけの勢力を築き上げたのである。『朝倉敏景十七箇条』は、「入道一箇半身にて不思議に国をとりしより以来、昼夜目を・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫