・・・折から、かつてはプロレタリア文学運動の主唱者の一人であった林房雄氏等から旺に文芸復興の叫びがあげられた。 この文芸復興の叫びには、プロレタリア文学の仕事に当時従っていた人々の中から呼応するものが現れたのみならず、ブルジョア文壇の数年来沈・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・そして、この不安の文学の主唱者たちは、不安をその解決の方向にむかって努力しようとする文学において唱えず、従来人々の耳目に遠かったシェストフなどを引き出して、不安の裡に不安を唱えて低徊することをポーズとしたのであった。 河上徹太郎、小林秀・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・クリスチャンということをこの頃強調する片山首相夫人は、営養失調で死んだ判事の事件に対して新聞記者のインタービューに答え「そこは奥様が少しなんとかね」と語っている。首相宅では闇買いはちっともしないでやっている。ときどきみなさまの下さるものは、・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・片山哲が首相であった時、一般都民が高い都民税に苦しんだ頃、同氏の税額が公表されたことがあった。それは東京都民として最低の額であった。MRAのお客となることは、懐のいたまない、気分のいいことかもしれないが、そのかわり、それだけの恥もひそめられ・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・吉田首相が記者会見のとき、連合国の日本民主化方策について、はじめは危惧の念を抱かないでもなかったが、この頃は我々にも十分納得ゆくようになって欣びにたえない、と語ったことは現実的な深い内容を暗示した。ポツダム宣言、世界憲章の人類的な道義の道は・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・火野葦平が同人雑誌の活溌化にふれて語っている自身の、陰忍自重四年の間待った甲斐あるこんにちのよろこびは、いかにも意味がふかい。首相は朝鮮での事件を、「天佑である」とよろこんでいる。そのこころに通じるものがあるようで、火野葦平、林房雄、今日出・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・、軍協力文学を主唱したのは林房雄であった。こんにち、彼の「大人の文学」の内容は占領下日本に時めく四十代の「大人」をもてなし、たのしませる好色ものや息子ものとなった。あのころも今も、「大人の文学」は、そのときどきの勢に属して戯作する文学であっ・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・吉田首相がイギリスの探偵小説をよみ、日本の大衆小説をよむ所以であろう。だが、慰みと、文学への欲求とは、一つのものであるだろうか。 もとより、めのこ算用で、部分品の全部がくみ合わさった状態における人間を考えたり、それを描いたりすることは、・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・の用意があると首相が声明し、それをのせたのは読売新聞であり、他新聞は、自殺説・他殺説それぞれの客観的根拠を語っているが、読売の記事は一貫して犯罪性を濃く表現し、しかもそれを何のよりどころもないのに共産党、組合と結びつけている傾向が露骨である・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・正業にしたがっているものは、税、税の苦しみで、片山首相が「間借り」で都民税一二〇円ですましていられたことを羨んだ。 こういう状態であってみれば、今日のメーデーに叫ばれる生活安定の要求は、この前二度の五月一日よりも痛切である。 税と云・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
出典:青空文庫