・・・ 今の時代は末法濁悪の時代であり、この時代と世相とはまさに、法華経宣布のしゅん刻限に当っているものである。今の時代を救うものは法華経のほかにはない。日蓮は自らをもって仏説に予言されている本化の上行菩薩たることを期し、「閻浮提第一の聖人」・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・野菜や果物等のはしりや季節はずれの物も不可でそのしゅんのものが最もよいそうである。この見地からするとどうやら外米は吾々には自然でなく、栄養上からもよいとは云えないことになりそうだ。しかし、食わずに生きてはいられない。が、なるべく食いたくない・・・ 黒島伝治 「外米と農民」
・・・雲殿の代理心得、間、髪を容れざる働きに俊雄君閣下初めて天に昇るを得て小春がその歳暮裾曳く弘め、用度をここに仰ぎたてまつれば上げ下げならぬ大吉が二挺三味線つれてその節優遇の意を昭らかにせられたり おしゅんは伝兵衛おさんは茂兵衛小春は俊雄と・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・ 藤村先生の戸籍名は河内山そうしゅんというのだ。そのような大へんな秘密を、高橋の呼吸が私の耳朶をくすぐって頗る弱ったほど、それほど近く顔を寄せて、こっそり教えて呉れましたが、高橋君は、もともと文学青年だったのです。六、七年まえのことでござい・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ とその時、隣りの六畳間から兄さんが出て来て、「しゅん子のそんなつまらない眼を見るよりは、おれの眼を見たほうが百倍も効果があらあ。」「なぜ? なぜ?」 ぶってやりたいくらい兄さんを憎く思いました。「兄さんの眼なんか見ていると・・・ 太宰治 「雪の夜の話」
・・・を喜び「しゅん」を貴ぶ日本人とはこうした点でもかなりちがった日常生活の内容をもっている。このちがいは決してそれだけでは済まない種類のちがいである。 衣服についてもいろいろなことが考えられる。菜食が発達したとほぼ同様な理由から植物性の麻布・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
出典:青空文庫