・・・今その障害を除いて先生の天才を同胞の間に広めることは誠に喜ばしい企てであると思う。 岡倉先生が晩年当大学文学部において「東洋巧芸史」を講ぜられた時、自分はその聴講生の一人であった。自分の学生時代に最も深い感銘を受けたものは、この講義と大・・・ 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
・・・そうしてこの体験は彼の生涯を通じて消え失せることがない。 そこで振り返って見ると、茸の価値をこの子供に教えた年長の仲間たちも、同じようにそれぞれの仕方においてこの価値を体験していたのであった。そうしてその体験の表現が、たとえば茸狩りにお・・・ 和辻哲郎 「茸狩り」
・・・彼の見た偶像は真実の生の障礙たる迷信の対象に過ぎなかった。彼が名もなき一人のさすらい人としてアテネの町を歩く。彼の目にふれるのは偶像の光栄に浴し偶像の力に充たされたと迷信する愚昧な民衆の歓酔である。彼らは鐃や手銅鼓や女夫笛の騒々しい響きに合・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
出典:青空文庫