・・・時代をつけると言ってしょっちゅう頬や鼻へこすりつけるので脂が滲透して鼈甲色になっていた。書斎の壁にはなんとかいう黄檗の坊さんの書の半折が掛けてあり、天狗の羽団扇のようなものが座右に置いてあった事もあった。セピアのインキで細かく書いたノートが・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・ちょっとすわったかと思うと、また歩きだしてはすぐにすわる、また歩きだす。しょっちゅう身もだえをして落ち着けないように見える。一夜、この猫が天鵞絨張りの椅子の上にすわっていたのを引きおろした跡に、何やら小さいもののうごめくのを居合わせた親類の・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・ うそもしょっちゅうついているとおしまいには自分でもそれを「信じる」ようになるというのは、よく知られた現象である。いろいろな「奇蹟」たとえば千里眼透視術などをやる人でも、影にかくれた助手の存在を忘れて、ほんとうに自分が奇蹟を行なっている・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・しかしそいつらには品がなくてしょっちゅうドルのことしか頭にないのだ〔欄外に〕スタンダールのアメリカ「赤と黒」「選挙のために靴やにつべこべするアメリカ」という風p.82 しかしおれは味もそっけもないアメリカ人の良識・・・ 宮本百合子 「「緑の騎士」ノート」
・・・「もうしょっちゅうです。この間も朝起きてみたら、机の上にむつかしい計算がいっぱい書いてあるので、下宿の婆さんにこれだれが書いたんだと訊いたら、あなたが夕べ書いてたじゃありませんかというんです。僕はちっとも知らないんですがね。」「じゃ・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫