・・・既に、左様な組織が存在すると仮定すれば、目下種々な事情から生活方針の選択に迷っている者は少くとも最後の判断は自分の心によってなされるのだと云う責任感も与えられ、当然、考察の深化と視野の拡大は予期されます。又、これから人生の始ろうとする者は、・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・興業師のマンネリズムがカッスル・ウォークの真価をみとめないで苦境におかれるという関係の面だけは後で説明しているけれども。 アステアの踊りの感覚からおしはかると、そういうピエロの悲しみが決して分らない男だとは思えない。監督が何か表面の筋に・・・ 宮本百合子 「表現」
・・・労働者農民・働く全人民の解放のためのたたかいを支持し、その困難な建設時代を貫いて男と等しく生産にたずさわり、男と等しく戦線に立ち、ソヴェトの勤労婦人は解放された女の真価というものを、自分とひととに向って確めた。 ソヴェト権力とともに、文・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ プロレタリア文学は、当然、内国的主題をいよいよ具体的に国際的なプロレタリア・農民解放運動全般との結びつきにおいて深化させて行くとともに、一方、次第にこの「転換時代」に類する作品、又は、紹介的役割をもつ「ズラかった信吉」の更に数段成功的・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・然し、共通の利害で密集した大衆の力が現実に高まって、従って主題がある程度まで深化されたモメントというものはあるわけだろう。 われわれは、こまかい具体的情景を書いて行かなければならない。だが、ただ職場でこういった、こんなことがあったと、現・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・それはそれまで人民の主人であった公方と藩主とをはっきり臣下とよぶ天皇であり、その制度であると示された。一天万乗の君の観念はつくられ、天皇の特権を擁護するために全力をつくした旧憲法が人民階層のどんな詮索もうけずに発布された。当時の笑い草に、憲・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ 日本代表の有島氏は、ヴェノスアイレスの第十四回大会へ島崎藤村氏と共に出席したのだから、恐らくこの一年の間に世界の空気がどのように動き、対立する気流はどのように深化したかを、些かは身に添えて感じていられるであろう。日本における外国文学翻・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・と実感をこめて云っている短い言葉の中には、卓抜な人間的・文学的才能にめぐまれつつ民衆の一人として経て来なければならなかったゴーリキイの、すべての時代的な真価と誤りとが率直に含蓄されていると思う。 マクシム・ゴーリキイは「錯雑した歴史の事・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ マリアは、はじめ声楽家になって、自分がこの世に生れて来たということの真価を発揮しようと思い立った。イタリーでその修業をはじめた。けれども、専門家としての練習に声が堪えないことがわかって、この希望は思い切らなければならなかった。もうこの・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・ 人間が自分の真価の片はじでものぞけば第一に得るものは非常な淋しさ、悲しさである。 自分を観てそれを感じ無いならまだ明かな眼の所有者ではない。 けれ共その悲しさ。 その淋しさが更に強い力で我々を生育させ確かな心で自分の進もう・・・ 宮本百合子 「無題(四)」
出典:青空文庫