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・・・に就ては我輩も氏の事業を軽々看過するものにあらざれども、独り怪しむべきは、氏が維新の朝に曩きの敵国の士人と並立て得々名利の地位に居るの一事なり(世に所謂大義名分より論ずるときは、日本国人はすべて帝室の臣民にして、その同胞臣民の間に敵も味方も・・・
福沢諭吉
「瘠我慢の説」
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・・・こういう方法を取るために田舎から出て来て東京をうろつくのが臣民として忠であるか、それとも落ち着いて自分の任務をつくすのが忠であるか、――もちろん後者であるに相違ない。 父のごとき志は、今の社会ではもはやそれを有効に充たす方法がないのであ・・・
和辻哲郎
「蝸牛の角」