・・・ それ覆載の間、朝野の別を問わず、人皆、各自の天職に心力を労すればまたその労を慰むるの娯楽なかるべからざるは、いかにも本然の理と被存候。而して人間の娯楽にはすこしく風流の趣向、または高尚の工夫なくんば、かの下等動物などの、もの食いて喉を・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・我今疾翔大力が威神力を享けて梟鵄救護章の一節を講ぜんとす。唯願うらくはかの如来大慈大悲我が小願の中に於て大神力を現じ給い妄言綺語の淤泥を化して光明顕色の浄瑠璃となし、浮華の中より清浄の青蓮華を開かしめ給わんことを。至心欲願、南無仏南無仏南無・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
・・・白熱した純一な動機から、無意味な、価値の怪しむべき常套を破る丈の心力が乏しい、その魂の無力を、率直に謙虚に承認し得ない虚栄心から構えた理論が私の心を苦しめます。「無為の聖」が、力の欠乏を装飾する用語になるべきではございません。人類の愛に・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
出典:青空文庫