・・・吉弥はうるさそうに三味線をじゃんじゃん引き出した。「よせ、よせ!」と、三味線をひッたくったらしい。「じゃア、もう、帰って頂戴よ、何度も言う通り、貰いがかかっているんだから」「帰すなら、帰すようにするがいい」「どうしたらいいの・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・なかなか探せぬと思っていたところ、いくらでも売物があり、盛業中のものもじゃんじゃん売りに出ているくらいで、これではカフェ商売の内幕もなかなか楽ではなさそうだと二の足を踏んだが、しかし蝶子の自信の方が勝った。マダムの腕一つで女給の顔触れが少々・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・九、これからは太宰治がじゃんじゃん僕なんかを宣伝する時になったようだ。僕なんか、ほくほく悦に入っている。『こんなのが仲間にいるとみんな得をするからな。』と今度ぼくは誰かに言ってやろうと、もくろんでいる。『虎の威を借る云々』とドバどもはいいふ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・朝から晩まで、くるくるコマ鼠のように働いてあげる。じゃんじゃんお洗濯をする。たくさんよごれものがたまった時ほど、不愉快なことがない。焦ら焦らして、ヒステリイになったみたいに落ちつかない。死んでも死にきれない思いがする。よごれものを、全部、一・・・ 太宰治 「女生徒」
・・・イトウで皆とわかれる時にも、じゃんじゃん飲んだよ。」「イトウ?」「そう。伊豆の伊東温泉さ。あそこで半年ばかり療養していたんだ。中支に二年、南方に一年いて、病気でたおれて、伊東温泉で療養という事になったんだが、いま思うと、伊東温泉の六・・・ 太宰治 「雀」
出典:青空文庫