・・・と同時に、一面には予が医学を以て相交わる人は、他は小説家だから与に医学を談ずるには足らないと云い、予が官職を以て相対する人は、他は小説家だから重事を托するには足らないと云って、暗々裡に我進歩を礙げ、我成功を挫いたことは幾何ということを知らな・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・ しかし、幸いなことには私は、作品の上で成功しようと思う野望は他人よりは少い。いやむしろ、そんなものは希としては持っているだけで、成功などということはあろうとは思えないのである。これは前にも書いたことで今始めて書くことではないが、作品の・・・ 横光利一 「作家の生活」
・・・洋画家の理想画や歴史画が幻想の不足のために滑稽に堕している間に、日本画家がこの方面である程度の成功を見せているのは、右のごとき事情にもとづくとも考えられる。 このことは歴史画のみならず、一般に複雑な情緒や事件を現わす画についても言える。・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
出典:青空文庫