・・・「惟皇たる上帝、宇宙の神聖、この宝香を聞いて、願くは降臨を賜え。――猶予未だ決せず、疑う所は神霊に質す。請う、皇愍を垂れて、速に吉凶を示し給え。」 そんな祭文が終ってから、道人は紫檀の小机の上へ、ぱらりと三枚の穴銭を撒いた。穴銭は一・・・ 芥川竜之介 「奇怪な再会」
・・・しかし一身の安危などは上帝の意志に任せてあるのか、やはり微笑を浮かべながら、少女との問答をつづけている。「きょうは何日だか御存知ですか?」「十二月二十五日でしょう。」「ええ、十二月二十五日です。十二月二十五日は何の日ですか? お・・・ 芥川竜之介 「少年」
・・・ 利にさとい人々は、日本の文化性にあるこの不幸な沈黙とうけみの習慣をとらえて、この国会の会期中、どっさりの反民主的な法案を上程している。そのなかには当然言論出版の官僚統制をもたらす用紙割当事務庁法案があり、ラジオ法案がある。国会の人さえ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ドストイエフスキーなどがよみ直されるのみならず、人間の神性とか獣性とかいう問題にからんで云々され、不安の問題が上程され、その深めるための文学的努力はされずに舟橋聖一氏は文学における行動性ということを主張しているし、なかなか壮観です。その行動・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・そしてラジオの民主化が、意識的に停滞させられているうちに、さる六月逓信省は放送事業法案を国会に上程した。 この法案は日本のラジオの自由と健全な発展を期するために立案されたものであるとして公表された。しかし一般にこの法案が日本のラジオの民・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・しかし、こんど上程された法案のように保守政党が占める両院の承認を経た五年間任期の五人の委員会を、不信任案をつきつけられている首相が任命して全日本の放送事業が統制されるとしたなら、現在の政府の堕落と思い合わせ日本のラジオの自由と民主化を期待す・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・そして最後は上帝への礼拝で終っている。 ほんの七行、今の小学生のよむ英語読本の「蝶々はとびます」風の文句に、仰々しく一々何々論何々論、と四角い字を並べ、肩を張って読んだ人々の心持を考えると、漫に洋学が公然日本に入りかけた時代の、白熱した・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・遙か彼方に、第一級、上帝の宮殿が、輝くパンシーオン風の柱列をもって眺められる。ヴィンダーブラ、ミーダと連立って、上帝の宮殿の方から、ぶらぶら自分達の住居、第二級天の方にやって来る。ヴィンダーああ、偉い目に会った。筋も何もすっかり・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・人民の公器であるラジオの民主化がいわれているうちに、政府は全く官僚統制の放送事業法案を議会に上程した。これらの言論・出版の自由の抑圧にしても、きょうでは、出版の民主化とかラジオの自由な発展とかいう表現に便乗して行われようとしているのである。・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
出典:青空文庫