・・・その生涯をことごとく述べることは今ここではできませぬが、この女史が自分の女生徒に遺言した言葉はわれわれのなかの婦女を励まさねばならぬ、また男子をも励まさねばならぬものである。すなわち私はその女の生涯をたびたび考えてみますに、実に日本の武士の・・・ 内村鑑三 「後世への最大遺物」
・・・私は、これ等の学校を卒業して、社会へ子供達が出た時に、学校生活がどれだけ役立ち、また、彼等を幸福ならしむるかと考えさせられるのであるが、これなども、女子に於けるよりは、男の子について、一層、問題となるのであります。・・・ 小川未明 「男の子を見るたびに「戦争」について考えます」
・・・ 社会は、それらの女子に職業を与えたであろうか。今日、多くの職業婦人の出現は、たしかに与えられつゝあることを証するにはちがいないが、果して、女子は、これによって経済上の独立を全うしつゝあるであろうか? 多くの男子に於てすら、まだ生存・・・ 小川未明 「婦人の過去と将来の予期」
・・・だいたい、このろくろ首いうもんは、苦界に沈められている女から始まったことで、なんせ昔は雇主が強欲で、ろくろく女子に物を食べさしよれへん。虐待しよった。そこで女子は栄養がとれんで困る。そこへもって来て、勤めがえらい。蒼い顔して痩せおとろえてふ・・・ 織田作之助 「秋深き」
・・・そンでまア巧いこと乳にありついて、餓え死を免れたわけやが、そこのおばはんいうのが、こらまた随分りん気深い女子で、亭主が西瓜時分になると、大阪イ西瓜売りに行ったまンま何日も戻ってけえへんいうて、大騒動や。しまいには掴み合いの喧嘩になって、出て・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・その出品は重に習字、図画、女子は仕立物等で、生徒の父兄姉妹は朝からぞろぞろと押かける。取りどりの評判。製作物を出した生徒は気が気でない、皆なそわそわして展覧室を出たり入ったりしている。自分もこの展覧会に出品するつもりで画紙一枚に大きく馬の頭・・・ 国木田独歩 「画の悲み」
・・・となれば、女は欠伸をしますから……凡そ欠伸に数種ある、その中尤も悲むべく憎くむ可きの欠伸が二種ある、一は生命に倦みたる欠伸、一は恋愛に倦みたる欠伸、生命に倦みたる欠伸は男子の特色、恋愛に倦みたる欠伸は女子の天性、一は最も悲しむべく、一は尤も・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・ ブース夫婦、ガンジー夫婦、リープクネヒト夫婦、孫逸仙と宋慶齢女史、乃木大将夫婦これらは、子どもの有無はともかく同じ公なる道、事業に心をあわせ、力を一つにして、夫婦愛が固くなったものだ。やんごとなき仏にならせわがために死にしここ・・・ 倉田百三 「愛の問題(夫婦愛)」
・・・涅槃に達しても、男子は男子であり、女子は女子である。女性はあくまで女性としての天真爛漫であって、男性らしくならなければ、中性になるのでもない。女性としての心霊の美しさがくまなく発揮されるのである。 しかしながら涅槃の境地に直ちに達しられ・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・ 個人的の例にわたるが、本誌の読者がたぶん知っているはずの、K・O女史や、K・I夫人などは、その趣味も、服装も、生活様式もはなはだモダンであるが、しかも仏教の信仰のある女性である。そしてその人品はどう見ても上っすべりしていないのである。・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
出典:青空文庫