・・・その一つは古典が文学として発生した歴史性を立体的に咀嚼して、そこからの滋養分を摂取してゆこうとする発展的、批判的摂取の態度であり、他の一つは、それとは反対にどちらかと云うと外部的に、様式、文脈の応用を狙ったような古典のひもときかたをしてゆく・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・けれども、私たちがそれを読む時間も金も限られており、何かの形でまとまった系統を立てて、ごく毎日の生活の滋養になるような工合に本を選び、それをポツポツと読んでゆくことは容易でない。 ブック・レビュウをして深く感じることは、ただ月二三冊の新・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・音楽を聞く時には魂の滋養物を吸っているような態度である。花の匂いをかいだり、書物や画を見たりなどする時には、我れを忘れて非常な勢いで近寄って来る。彼女が美しい物の話をする時には内面的に顔が輝いて来る。暗い蒼白い額はセンシチヴな皺をつくる。ほ・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
・・・ 根に対する情熱を鼓吹し、その根の本能的に好むところの土壌のありかを教え、そうして幾千年来堆積している滋養分をその根に供給してやるのが教育の任務である。特に大学教育の任務である。 大学が植木鉢に堕するか否かは、人の問題であって制度の・・・ 和辻哲郎 「樹の根」
・・・あたかも大学と劇場と美術学校と美術館と音楽学校と音楽堂と図書館と修道院とを打って一丸としたような、あらゆる種類の精神的滋養を蔵した所であった。そこで彼らは象徴詩にして哲理の書なる仏典の講義を聞いた。その神話的な、象徴化の多い表現に親しむとと・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・そうしてただ、その芽の成長を助ける滋養分だけを、与えようというのです。その成長が自分の希望するような人格を造り上げて行かなくても、それは仕方がありません。それは宿命ですから。人力のいかんともしがたいものですから。しかし私は、その成長が歪にな・・・ 和辻哲郎 「すべての芽を培え」
出典:青空文庫