・・・支那の成語を用うるものにして、こは成語を用いたるがために興あるもの、または成語をそのままならでは用いるべからざるものあり。支那の人名地名を用い、支那の古事風景等を詠ずる場合はもちろん、わが国のことをいう引合いに出されたるも少からず。その句、・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・現地の軍当局の信じられないほどの無責任、病兵を餓死にゆだねて追放するおそろしい人命放棄についても記録されはじめた。大岡昇平氏の「俘虜記」そのほかの作品に見られる。ソヴェト同盟に捕虜生活をした人々のなかから、「闘う捕虜」「ソ同盟をかく見る」「・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・私たちの科学上の低い低い常識でさえ、旅客機として翔ぶからには、人命に対する責任上台湾の中だからとて無電なしでいいとはうけがい難い。或は他の何かの理由で民間の機は無電のことについてふれてはいけないとでも云うのでもあろうか。 現在の複雑な内・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・ 十月二十五日から三月十八日 おらおっちぬよ、そんけ乗ったら、この年で…… これは、革命後ロシアではいろんな町名が変えられ、それが大抵世界のプロレタリアート革命運動に関係のある年月日、人名などを揶揄ったレーニングラード人の笑話である。・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・芸術運動が高まって綜合雑誌『ナップ』が発刊されていた頃、山田清三郎・川口浩両氏によって編輯されたプロレタリア文芸辞典について、試みにハの部を索いて見ると、パルナシアンという字はあるが、バルザックという人名は見当らず、葉山嘉樹はあってバルザッ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・第二次大戦で、最も僅かの人命を犠牲としたのはアメリカであったし、本土に襲撃を蒙らなかった唯一の国もアメリカであった。そのように比較的少い損傷でヨーロッパと東洋のファシズムとたたかい、それをうち倒したアメリカが、こんにちもっている諸問題の複雑・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・「――あの人名がわるいんですよ」「へえ――誰にきいて」「だって、あんな規知なんて名つけるから、逆さになっちゃったんでしょう」「馬鹿仰云い!」 二人は声を揃えて笑った。「ああ、あなたに見せるものがある」 尚子は、自・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・主要食糧は、なるほど直接人命にかかわる性質をもっている。だが、農民は一年の労苦を傾けて、それを生産した者である。供出したがらないのは、したがらない理由がある。それにもかかわらず、農村の生産必需品の原料ともなる物資は、いくらかくしておいても罪・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
・・・「なに、教師をしていると、人名や地名の説明を求められますから、この位な本がないと、心細いのです。」 F君と私とは会話辞書の話をした。Meyer と Brockhaus との得失を論ずる。こう云うドイツの本が Larousse や B・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫