・・・東京の大新聞二三種に黒枠二十行ばかりの大きな広告が出て門人高山文輔、親戚細川繁、友人野上子爵等の名がずらり並んだ。 同国の者はこの広告を見て「先生到頭死んだか」と直ぐ点頭いたが新聞を見る多数は、何人なればかくも大きな広告を出すのかと怪む・・・ 国木田独歩 「富岡先生」
・・・しかしながら不幸にして皇后陛下は沼津に御出になり、物の役に立つべき面々は皆他界の人になって、廟堂にずらり頭を駢べている連中には唯一人の帝王の師たる者もなく、誰一人面を冒して進言する忠臣もなく、あたら君徳を輔佐して陛下を堯舜に致すべき千載一遇・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・縁端にずらり並んだ数十の裸形は、その一人が低く歌い出すと、他が高らかに和して、鬱勃たる力を見せる革命歌が、大きな波動を描いて凍でついた朝の空気を裂きつつ、高く弾ねつつ、拡がって行った。 ……民衆の旗、赤旗は…… 一人の男は、跳び上る・・・ 徳永直 「眼」
出典:青空文庫