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・・・ 袷の対を着て、きっちり髪をわけている幸治は、武骨っぽいずんぐりした体つきに似合わない軟かい笑いをたたえて、テーブルのところへゆっくりした動作で坐った。「随分しばらくお目にかかりませんでしたね」「ついかけちがって……」 多喜・・・
宮本百合子
「二人いるとき」
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・・・主人はずんぐりな、眼の小汚い男で、よくゴーリキイをたしなめた。「ほら、また腕なんか掻いてる! お前は町の目抜の商店に勤めてるんだ。これを忘れちゃいけねえ。小僧ってものは扉口んところへ木偶のようにじっと立っているもんだ」 凝っと立って・・・
宮本百合子
「マクシム・ゴーリキイの伝記」