・・・諸君は今日のようなグラグラ政府には飽きられただろうと思う、そこでビスマークとカブールとグラッドストンと豊太閤みたような人間をつきまぜて一鋼鉄のような政府を形り、思切った政治をやってみたいという希望があるに相違ない、僕も実にそういう願を以てい・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・プロレタリアートの戦争に対する態度は、ブルジョア平和主義者や、無政府主義者や、そういう思想から出発した反戦文学者とは、原則的に異っている。被支配階級が支配階級に対してやる闘争は必要で、進歩的な価値があると考える。奴隷が奴隷主に対しての闘争、・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・そしてその高慢税は所得税などと違って、政府へ納められて盗賊役人だかも知れない役人の月給などになるのではなく、直に骨董屋さんへ廻って世間に流通するのであるから、手取早く世間の融通を助けて、いくらか景気をよくしているのである。野暮でない、洒落切・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・おれの身体でも売れるといいんだが、野郎と来ちゃあ政府へでも売りつけるより仕様がねえ、ところでおれ様と来ちゃあ政府でも買い切れめえじゃあねえか。川岸女郎になる気で台湾へ行くのアいいけれど、前借で若干銭か取れるというような洒落た訳にゃあ行かずヨ・・・ 幸田露伴 「貧乏」
・・・ 四 しかし、震災の突発について政府以下、すべての官民がさしあたり一ばんこまったのは、無線電信をはじめ、すべての通信機関がすっかり破かいされてしまったために、地方とのれんらくが全然とれなくなったことです。市民たち・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・英国はジョージ第二世の政府を戴いて居た。或晩夜廻りが倫敦の町を廻って居ると、テンプルバアに近い所で、若い娘が途に倒れているのを見付けた。「一人者の死」SCHNITZLER 戸を敲いた。そっとである。「いつの日か君帰ります」ANN・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・その時のジャアナリズムが、政府の方針を顧慮し過ぎて、自分の小説の発表を拒否する事が、もし万一あったとしても、自分は黙って書いて行きます。発表せずとも、書き残して置くつもりです。自分は明白に十九世紀の人間です。二十世紀の新しい芸術運動に参加す・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・ 政府の所属で、各種科学の特殊な専門的題目の研究所として看板をかけた処では、比較的にいくらか自由である。しかし、例えば蚯蚓の研究所で鯨の研究をやりたいといったような場合には、ともかくも一応上長官の諒解を得るために、その研究の結果がその研・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・火事のために日本の国が年々幾億円を費やして灰と煙を製造しているかということを知る政府の役人も少ない。火事が科学的研究の対象であるということを考えてみる学者もまれである。 話は変わるが先日銀座伊東屋の六階に開催されたソビエトロシア印刷芸術・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・ゾラの小説にある、無政府主義者が鉱山のシャフトの排水樋を夜窃に鋸でゴシゴシ切っておく、水がドンドン坑内に溢れ入って、立坑といわず横坑といわず廃坑といわず知らぬ間に水が廻って、廻り切ったと思うと、俄然鉱山の敷地が陥落をはじめて、建物も人も恐ろ・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
出典:青空文庫