・・・ ところが、戦後共産主義の毎日が始って見ると農村にはいろいろな困難が起って来た。 農民の間の反動的分子は密造酒を飲みながらゴネだした。「ヘエ、俺らコンムニストにだまされたんだ。奴等あ何て云った? 土地は農民へ! って云っといて、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・しかし文学現象は、その寛容の谷間を、戦後経済の濁流とともにその日ぐらしに流れて、こんにちでは、そのゴモクタが文学の水脈をおおいかくし、腐敗させるところまで来ている。ちかごろあらわれる実名小説というものも、そこにどういう理窟がつけられようとも・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ 一九四九年は、いい年でなかった。戦後四年めになって、日本の社会と文化とは、権力がのぞんでいる民主化抑圧の第四の時期を経験した。ワン・マン彼自身が国際茶坊主頭である。茶坊主政治は、護符をいただいては、それを一枚一枚とポツダム宣言の上に貼・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・そして、雑誌を廃刊し、また経営不振におちいった出版社は、ほとんど戦後の新興出版社であり、「老舗はのこっている」。 出版不況は、戦後の浮草的出版業を淘汰したと同時に、同人雑誌の活溌化をみちびき出している。「先輩たちが同人雑誌を守って十年十・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ ひとくちに、戦後の文学、戦後の作家とよばれている現代文学の素質に、このように日本独特な精神の国内亡命が、因子となって作用している事実は、見のがされてはならない点である。 第二次大戦、ファシズムの惨禍を、日本の戦時的日常の現実を、通・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ 戦後の子供がラジオを通じレコードを通じ、なじんで歌う歌は、軽快に、明るくたのしく、リズミカルであるように、と児童の心理に即して選ばれている。君が代が歌そのものとして、歌う子供たちにわけのわからない義務感しか与えていないとすれば、君が代・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・ 昭和のはじめ第一次世界大戦後の各国の社会主義運動の擡頭につれ、日本にもプロレタリア文学運動がはじまった。その時代になってはじめて婦人の社会的地位の向上や婦人解放の課題は、その国の大衆生活全体の地位の向上と解放の実現とともに解決される問・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 文化の分野でも、戦後における再検討、より高い段階への発展のための研究がさかんに着手されている様子である。『雄鶏通信』十一月号やその他の雑誌にも、ごく断片的な報道がのせられた。除村吉太郎氏の翻訳で、私たちはレーニングラードの二雑誌『星』・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 産別会議情報宣伝部が編輯し、出版した『官憲の暴行』という戦後労働運動弾圧の記録がある。現場の労働者によってかかれたらしいこの記録が、もっと各現場組合の文学的能力を生かしていたら、どんなに浸透的で永続する読後感を一般の読者に印象づけるこ・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ 第二次大戦後の世界は、一層深い傷と破滅を経験して、中産階級の没落はもとより民族そのものの自立性さえもファシズムの暴力に対する抵抗の過程でおびやかされました。しかも日本・イタリー・ドイツのように三国連盟して、東洋と西洋の平和を攪乱したフ・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
出典:青空文庫