・・・おおぜいの登場者の配置に遠近のパースペクチーヴがなく、粗密のリズムがないから画面が単調で空疎である。たとえば大評定の場でもただくわいを並べた八百屋の店先のような印象しかない。この点は舶来のものには大概ちゃんと考慮してあるようである。第三には・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・質の粗密によってあるいは燃え切りやすいのもあれば、燃えにくく消えやすいのもある。いずれも内部には無数な細かい穴があってその間に多量の瓦斯を吸収する性質がある、炭が臭気止めに使われるのはこのためである。近頃檳榔子の炭を使って極寒まで冷した空気・・・ 寺田寅彦 「歳時記新註」
・・・それからこれは少し変なものではあるが猫の毛並みにも時として週期性の縞状の疎密を呈することがある。あれもこの皺の問題といくぶん連関しているらしく思われるが詳しいことはわからない。これも一つの問題ではある。 裂罅、あるいは「われめ」の生成は・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・ 普通の和製のレコードとヴィクターのと見比べて著しく目につく事は盤の表面のきめの粗密である。その差はことに音波の刻まれた部分に著しい。適当な傾きに光を反射させて見た時に一方のはなんとなくがさがさした感じを与えるが、一方は油でも含んだよう・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・一種の疎密波が身長に沿うて虫の速度よりは早い速度で進行する。 もしか自分がむかでになってあれだけのたくさんな足を一つ一つ意識的に動かして、あのような歩行をしなければならないとしたら実にたいへんである。思ってみるだけでも気が狂いそうである・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・実際には行われ難き事なれども、もしも諸方に行わるる政談演説を聴きて、その論勢の寛猛粗密を統計表につくりて見るべきものならば、そのいよいよ粗暴にして言論の無稽なる割合にしたがいて、その演説者もいよいよ不学なりとの事実を発明することあるべし。他・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
出典:青空文庫