・・・ツメタクナイ。ワタクシもう三つ食べました。チトモツメタクナイ。――。ツメタイノ持って来てください。ツメタイアイスクリーム持って来てください」というのである。 結局シャーベットか何かを持って来たのでそれでやっとどうやら満足したらしく、傍観・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・ ベルリンから 今ここのベルリイナア座で「タイフン」という芝居をやっています。作者はハンガリー人で、日本の留学生のことを仕組んだものだそうです。たいへん人気がいいそうであります。主人公の日本人の名がドクトル・タケ・・・ 寺田寅彦 「先生への通信」
・・・手結 「タイ」森。これではないらしい。あるいは「ツイ」切れるか。ビルマでは「テー」砂。出雲の手結とは必ずしも同じではないかもしれぬ。津呂 「ツル」は突き出る。二箇所の津呂いずれも国の突端に近い。以布利 バタク語で「イフル」は前同・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・主張の長所を認むるの点において智者である。他意なく人のために尽さんとするの点において善人である。ただ自他の関係を知らず、眼を全局に注ぐ能わざるがため、わが縄張りを設けて、いい加減なところに幅を利かして満足すべきところを、足に任せて天下を横行・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・「もしそうでないとすると、つまりその、世界のシンポハッタツ、カイゼンカイリョウがそのつまりテイタイするね。」「エン、エン、エイ、エイ。」クねずみはまたひくくせきばらいをしました。 相手のねずみは、「へい。」と言って考えています。・・・ 宮沢賢治 「クねずみ」
・・・ 階級的な男女の結合というと、すぐコロンタイの「赤い恋」が話題にのぼったのは、かれこれ七年くらい前のことであろうか。当時私はモスクワにいた。そして本家本元のソヴェト同盟では厳密に批判され、本屋に本も出ていないようなコロンタイズムが流布す・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ 或るカイタイ会社が北海道のどこかで暗礁にのりあげて三年の間ゆらゆらしていた五千トンの船を二万円で買った。ドックに入れて、四十万かけて底をはりかえた。そして、二十万円に売った。 ドック料が一日五千円ばかりで、ドック側から云えば、なる・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・私は私共の持たない、若しくは持たされない権威の多くを所有する者、所有する価値ある者として、他意なく彼女等を尊敬致します。又自分等の将来に其等の権能を期待も致します。然し、私は、此からもう一歩進んで、其等種々の優越に就てもう少し深い省察を試み・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 現在見えているいろいろの問題の性質と大会報告の印象から、わたしは、飾りけなくまた他意のない提案として、「勤労者文学」という柵を発展的にどけて、はっきりした歴史的使命をもつ労働者階級の文学を押し出して欲しい。そのことによって、民主主義文・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・○国鉄と麻布三連隊の兵士 赤坂一レンタイと市電労働者の共同懇談会が持たれた。○青年印刷工 六十九銭ぐらい。 一人の仲間は、「活字中の漢字という漢字を知って居り」その人を先にたてて皆のあつまる会をつくり、会の金を出すためにその・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
出典:青空文庫