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・・・ 麻のようなブロンドな頭を振り立って、どうかしたら羅馬法皇の宮廷へでも生捕られて行きそうな高音でハルロオと呼ぶのである。 呼んでしまってじいっとして待っている。 暫くすると、大きい鈍いコントルバスのような声でハルロオと答える。・・・
森鴎外
「木精」
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・・・美しい高い女高音に近い声が、その響きにからみついて緩やかな独唱を始める。やがてそれを追いかけるように低い大きい合唱が始まる。屈折の少ない、しかし濃淡の細やかなそのメロディーは、最初の独唱によってまた身震いを感じないでいられなかった我々の祖先・・・
和辻哲郎
「偶像崇拝の心理」