たり

の解説

［助動］［たら｜たり｜たり｜たる｜たれ｜たれ］《完了の助動詞「つ」の連用形に動詞「あり」の付いた「てあり」の音変化》ラ変以外の動詞、および動詞型活用の助動詞の連用形に付く。

1. １ 動作・作用の継続・進行を表す。…ている。…てある。

   1. 「おもしろく咲きたる桜を長く折りて」〈枕・四〉

1. ２ 動作・作用が完了し、その結果が状態として存在する意を表す。…た。…ている。…てある。

   1. 「くらもちの皇子 (みこ) おはしたり、と告ぐ」〈竹取〉

1. ３ 動作・作用が完了する意を表す。…た。…てしまう。

   1. 「春風に一もみ二もみもまれて、海へさっとぞ散ったりける」〈平家・一一〉

[補説]中世以降は、他の完了の助動詞「つ」「ぬ」「り」および過去の助動詞「き」「けり」などの用法をしだいに吸収し、「たる」を経て現代語の「た」に引き継がれる。→た →つ →ぬ →り

たり

の解説

［助動］［たら｜たり・と｜たり｜たる｜たれ｜たれ］《格助詞「と」に動詞「あり」の付いた「とあり」の音変化》体言に付く。事物の状態や性質などを強く断定する意を表す。…である。…だ。→たる →なり

• 「けふは人のうへたりといへども、あすは我が身のうへたるべし」〈平治・下〉

[補説]断定の「たり」は平安時代以後の漢文訓読文や和漢混交文に用いられた。

たり

の解説

［接助］《文語の完了の助動詞「たり」から》用言、一部の助動詞の連用形に付く。ガ・ナ・バ・マ行の五段活用動詞に付く場合は「だり」となる。

1. １

   1. ㋐動作や状態を並列して述べる。「泣い―笑っ―する」「とんだり跳ね―する」

   2. ㋑反対の意味の語を二つ並べて、その動作・状態が交互に行われることを表す。「暑かっ―寒かっ―の異常な陽気」「足を上げ―下げ―する運動」

1. ２ （副助詞的に用いられ）同種の事柄の中からある動作・状態を例示して、他の場合を類推させる意を表す。「車にひかれ―したらたいへんだ」

1. ３ （終助詞的に用いられ）軽い命令の意を表す。「早く行っ―、行っ―」

[補説]「たり」は中世以降、文語的な「…ぬ…ぬ」に対し口語として動詞の連用形だけに付く形で用いられた。1は、並立助詞として扱われる場合もあるが、近世後期からはあとのほうを省略して「…たり…」の形をとる場合もみられる。

たり【^▽人】

の解説

［接尾］助数詞。「三 (み) 」「四 (よ) 」など和語の数詞に付いて、人を数えるのに用いる。「み―」「よ―」