・・・ ヒューマニズムの提唱が総て非人間的な抑圧に抗するものとしての性質をもっているからには、文学に関して云われている社会性のことも、以上のことと全然切りはなしては考えられないのである。 作家が、作家となる最も端緒的な足どりは周囲の生活と・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
近頃、一部の作家たちの間に、日本の作者はもっと「大人の文学」をつくるようにならなければならない、という提唱がなされている。この頃一般人の興味関心は文学から離れつつある。その理由を、今日の作家は文学青年の趣向に追随して、その作品の中で人・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
・・・新しい理解で芸術におけるリアリズムが提唱された場合にも、持ち出されかたはほぼ同様であった。 私には、自身のその経験――色が分っているがその色として感情にまで感覚されなかった時のおどろきが、その原因となった疲労から恢復した後も忘られなかっ・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・ここには第一次大戦後の世界デモクラシー時代から提唱されていまだに未解決な課題が再びとりあげられているとともに、アメリカを民主国家として知る世界のすべての人にとって、それが存在し得ていることを不審に思わせていたいくつかの民主的と見えない法規へ・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・一つには、もとのプロレタリア文学時代活動した人々が、当然民主主義文学運動を提唱することになったから、ある意味では、かえって、「昔のプロレタリア文学ではないもの」を要求する空気にひかれたこともある。これらの人々の内部に同じような要求もなかった・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・を否定して客観小説を提唱し、より広い社会性を作品に齎す必要は、大衆について理解がそれぞれに違っている作家たちの間にも、共通な一つの翹望として今日彼等の関心の前面に置かれている。今日の紛糾した社会情勢の中で、現実の諸事情を文学作品の中に客観的・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・創作方法における社会主義的リアリズムの提唱は、世界文学史の上に意味深い一時期を画したのであった。 社会主義的リアリズムが提唱されはじめたのは一九三二年であって、ソヴェト同盟では第一次の五ヵ年計画が終った社会を土台としており、日本では小林・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・前後して社会主義リアリズムの問題が、それらのすべてが正鵠を得ているとはいえぬさまざまの理解の方向をもって提唱されはじめた折から、作品は複雑な社会性を反省しつつ一般の感興を呼び起し、華やかな登場の拍手をもって迎えられた。 今度改めて単行本・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
・・・の発展的解消を提唱し、創作方法のスローガンとして社会主義的リアリズムをかかげ、広汎に強力に、いきいきと、すべての作家よ、めいめいの実践をとおして「社会主義建設を描け」と云っているわけです。 以上の簡単な説明でも明らかなとおり、この「社会・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・このことはこの二、三年間のさまざまな思想的文学的態度の提唱の中にも感じられることである。 日本人が、感情的、情緒的であるという特徴は、どこから来ているのであろう。人文地理的な説明だけでは私には納得しきれない。スペインのこんにちの燃え立つ・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
出典:青空文庫