・・・テニソンの『アイジルス』は優麗都雅の点において古今の雄篇たるのみならず性格の描写においても十九世紀の人間を古代の舞台に躍らせるようなかきぶりであるから、かかる短篇を草するには大に参考すべき長詩であるはいうまでもない。元来なら記憶を新たにする・・・ 夏目漱石 「薤露行」
・・・ ひるすぎは先生もたびたび教壇で汗をふき、四年生の習字も五年生六年生の図画もまるでむし暑くて、書きながらうとうとするのでした。 授業が済むとみんなはすぐ川下のほうへそろって出かけました。嘉助が、「又三郎、水泳ぎに行がないが。小さ・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・僕はまず家へ帰ったらおっ母さんの前へ行って百けたぐらいの六かしい勘定を一ぺんにやって見せるんだ、それからきっと図画だってうまくできるにちがいない。僕はまず立派な軍艦の絵を書くそれから水車のけしきも書く。けれども早く耗ってしまうと困るなあ、こ・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
・・・革命の当時はレーニングラード附近の新しい学校で図画の先生をやっていたフォルシュはそれから後、キエフ市へ行った。彼女はウクライナ共和国の国立出版所で、ロシア部の担当だった。国立出版所の机の前で働くかと思うと、「土曜労働」でジャガ薯掘りをやりな・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
出典:青空文庫