・・・それでいよいよ斎藤のおッ母さんに意見をして貰うということに相談が極り、それで家のお母さんが民子に幾度意見をしても泣いてばかり承知しないから、とどのつまり、お前がそう剛情はるのも政夫の処へきたい考えからだろうけれど、それはこの母が不承知でなら・・・ 伊藤左千夫 「野菊の墓」
・・・の終りは、そのように我からしんみりとなって、とどのつまりは尾崎一雄におもてを向け、結局君なんかがもうすこし、しっかりしないからいけないのだ、と半ばたしなめ、半ばあきらめて歎息することになったのであったろう。 三好十郎は、いわゆる肉体派作・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・あすこは金持の少し才能のある娘を親ぐるみでおだてて、あっちこっちへ留学させ、とどのつまりは学校のスターを作る流儀だから、始めはそれで行って苦労している内に、幾分かそのわくからはみ出たのでしょう。緑郎も三十で相当に色々見聞して、ああいう地味ら・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 御事は母御がうみそこのうて口から先に娑婆の悪い風にふれたと見ゆるわ。法 そのためで経典を誦する事がいこう巧者になりまいてのう――まんざらそんばかりもまいらなんだがまだしもの事―― ま! とどのつまり船は畑ではよう漕げぬと申す事・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・ プロレタリア文学の正当な発達は、とどのつまり全プロレタリアの階級的自発性の発達でしかない。闘争をくぐり、文化戦線においても、ただ受け身のプロレタリア芸術消費者ではなくなりかけて来たほど、日本のプロレタリアの力は、高まった。芸術を生産す・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・これらの連中は、いつ、何を話しても、とどのつまりは「何々であった」「こうだった」「ああだった」と万事を過去の言葉でだけ話す、その事実にゴーリキイの観察と疑惑がひきつけられた。意味深い彼等のこの特性の発見は次第にゴーリキイの鋭い心に或る恐怖を・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・これらの連中は、いつ、何を話してもとどのつまりは「何々であった」「こうだった」「ああだった」と万事を過去の言葉でだけ話す、その事実にゴーリキイの観察と疑惑がひきつけられた。この彼等の意味深い特性の発見は次第にゴーリキイの心に或る恐怖を感じさ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
出典:青空文庫